作者 | マルティン・ションガウアー Martin Schongauer |
---|---|
制作年 | 1475-85年頃 |
サイズ | 縦16.4p×横11.6p |
技法・素材 | 版画(エングレーヴィング) |
解説 | 画面下部の中央にMとSの文字が彫りこまれています。作者の頭文字をあらわし、モノグラムと呼ばれるものです。モノグラムは現代の私たちにも親しみ深いものですが、ヨーロッパでは500年以上も前からこんなふうに使われていました。ここではマルティン・ションガウアーをあらわします。ションガウアーはヨーロッパの版画の歴史の中で、フルネームがわかり、生涯についてもある程度の事実が知られている最初の世代の一人です。 たいへん細い線でキリスト伝の1シーンを描いたこの作品は、金属の版(主に銅)をビュランと呼ばれる鋭い切っ先の刃物で直接、彫り込んで作られています。その繊細な線で、さまざまな風貌の人物たちが巧みに描きわけられています。椅子に座り手を洗うピラト、その前に立つ瞑想的な表情のキリスト、周囲を取り囲む人々の異様な風貌や姿態など、小さな画面にもかかわらず変化に富み、見るものを飽きさせません。ピラトに差し出された水差しは注ぎ口が龍になっています。実はこの凝った意匠には、この技法が金や銀製の器物に模様を施す技術と深いかかわりがあったことが示されているのです。 |
所蔵美術館 | 町田市立国際版画美術館 |